ねえ、理解不能【完】
「千草のばか」
そっと聞かれないように小さくつぶやく。
置いていくなんて、ばか。
振り向かないなんて、ばか。
私のこと甘やかしてくれないなんて、
本当に、ばか。
その背中に手を回して、千草と抱き合っていた女の子のことを思い出す。
千草の手は女の子の背中にまわっていて、彼女の顔はすごく幸せそうだった。
たしか、あれは一年前のこと。
私の家の隣にある千草の家。
自分の家の前で、やつは当時の彼女と抱き合っていた。
可愛い子だった、すごく。
今でも、顔まで覚えてる。
チェックのワンピースに、ふわふわの髪の毛。私なんかより何倍も可愛くて、オシャレな女の子だったよね。