ねえ、理解不能【完】
「......初めての相手?」
「違う」
「そ、なんだ」
「お互い初めてじゃないし、」
「広野みゆちゃんも、違うんだ。そっか。へえ、.....なんかびっくり」
「あいつうまいよ」
いつもいつも不機嫌なくせにこんな時だけ完璧にあげられた口角に、わたしは嘘でも笑いかえすことはできなくて、もう聞きたくないという表情を作るしか術がなかった。
背中なんて、本当はもうずっと前から見えてなかったんだ。
あいつ、なんてそんな呼び方で広野みゆちゃんを呼ぶくらいには、二人の間にはわたしの知らないなにかがあって、“そういうこと”の上手い下手なんてそんなの聞きたくなかった。
想像する。
でも、したくないとかいう次元の前に、そもそもうまく想像できるくらい経験もなくて、そのことに悔しさがまた募った。