ねえ、理解不能【完】
私は部屋の生ぬるい空気を吸い込んで、ぎゅっと自分の膝を抱える。膝の頭に頰をくっつけると、どうしてかひんやりしていた。
「……別れたよ。でも、月曜の放課後に空き教室でちゃんと話すことになった」
「二人で?」
千草の少し焦ったような声が耳に届く。きっと、私がゆうのせいで震えていたことを思い出して、危ないって思ってくれたんだと思う。
だけど、どうしてかゆうはもう私にはなにもしない、という確信があって。だから、千草が思っているようなことには絶対にならないって信じてる。
「うん、二人でいいかなって。ゆうは、怖いなら誰か連れてきてもいいって言ってたけど、大丈夫だと思う」
私がいいよって言わなければたぶんゆうは指一本触れないんじゃないかな。そこまで思おうとするのは、ゆうに対するせめてもの償いの気持ちも入っているかもしれないけれど。
私は、千草の返事を待つ。
しばらく黙ったまま返事をしてくれないから、ドキドキ、徐々に鼓動も速くなっていく。
それで痺れを切らして、千草、って名前を呼ぼうとした時、携帯の向こうから、口を開く気配みたいなものがした。