ねえ、理解不能【完】
そうしたら、つばを飲み込む音が向こうから聞こえて、続けざまに、ごめん、と細くて低い声で千草が言った。
「青、ごめん、嘘」
今日の私はかなり涙腺が弱いみたいだ。
千草が謝ってきたことで、鼻の奥がつーんと痛んだ、涙がまた出てきそうになってしまう。
嘘じゃない、思ったから言ったくせに。傷つけた、って分かったから、謝ったんだろう。
千草の真意が何一つ見えなくて戸惑う。
「…月曜日、」
「う、ん」
「俺もいくから、教室で待ってて」
何を言い出すのかと思えば、予想外のことを言われ、出かけていた涙も引っ込む。
目をパチパチさせながら、たった今千草に言われた言葉を頭の中で反芻させてみたら、
「……っえ、」
思わず、間抜けな声がもれてしまった。
「川瀬と会うの、誰か連れてきていいって言ったんだろ」
「でも、っ」
「でもじゃない」
「………、」
「おとなしく教室で待ってて」
「えっ?!ちょ、」
断るためになにか言い返そうと思ったら、プツリ、といきなり電話が切れた。
通話が終了していることを知らせる機械音が虚しく耳元に響く。