ねえ、理解不能【完】
今となってはもう昔のようにおもうけど、まだあのころの感情の名前は行方不明で自分のことなのによく分からない。
懐かしくて、なんとなく苦い出来事だった。
別れてって言ったことは千草に謝るべきだったし、そもそも言うべきではなかった、なんて、今でも少し後悔している。
「ーーーわっ……!」
過去のことを振り返ってこっそり反省していたら、何かにぶつかってしまった。
鈍い音はしなかったものの、結構な衝撃に、くらくらする一歩手前。
ぶつかってきっと赤くなっているだろう鼻の先をよしよしと撫でながら、前を見る。
目と鼻の先に黒い学ランの背中。
「もう、千草!急に止まらないでよ~」
あまりの硬さに電信柱かと思ったよ。コンクリート並の硬さだった。
.......なんて、それは言いすぎだけど。
どうせ、身体には筋肉しかないんだろう。私の脂肪を半分くらい分けてあげたい。というか、無理やり押しつけたい。
身長は高いくせに細身で筋肉質で、スタイルがよくて。私のむちむちした身体と比べるといくら男の子と女の子の違いって言ってもため息つきたくなっちゃうな。
.......憎たらしいやつめ。