ねえ、理解不能【完】
妃紗ちゃんと恋愛の話を最後にしたのはお菓子作りをした時で、それから後に色々なことが起きた。
妃紗ちゃんには昨日起きた一連のこと以外にも言ってないことがたくさんあって、打ち明けないままでいるのもそろそろ限界だった。
朝だからか女子トイレの洗面所は私と妃紗ちゃん二人しかいなくて、貸し切り状態でありがたい。
妃沙ちゃんと向かい合い壁にもたれかかって、緊張しながらも口を恐る恐るひらく。
「あのね。まずはね………ゆ、ゆうと別れたの」
ちら、と上目で妃沙ちゃんをうかがうと、妃沙ちゃんは一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに表情をくずして「そっかあ」と切なそうに笑った。
「いつ?金曜日の時点ではまだ付き合ってたでしょう?土日の間だよね」
「うん、ゆうの家で遊んだんだけどね、それでーーー」
別れることになったちいさな事件と今日の放課後にもう一度ゆうと話をすることを、ひとつひとつ隠さずに妃沙ちゃんに伝える。
妃紗ちゃんは、相槌をうちながら静かに聞いてくれた。こういう時、余計なことはなにも言わない妃沙ちゃんだけど、「川瀬くんも、自分が怖かっただろうな」と一度だけすこし困ったような顔を作って目を伏せた。