ねえ、理解不能【完】












帰りのホームルームが終わると、部活のある人はもちろん、ない人もぼちぼちと教室から出ていく。


本来なら私もすぐに帰るはずだけど、今日は違う。

妃紗ちゃんは、頑張ってね、と応援の言葉をこっそり囁いて、帰って行った。





私は帰り支度を終わらせて、落ち着かない心を抱えながら自分の席に座ったままでいる。

……おとなしく教室で待ってて、って言ってたから。





気づいた時にはもう、ゆうの姿は教室にはなかった。約束の空き教室に行ったんだと思う。



これからゆうと顔を合わせて話すことを想像すると、どうしても胸がきりきりと痛む。気まずいことになるだろうし、朝一度目があった時のゆうの顔に笑みが消えた瞬間がフラッシュバックする。




机の上に手を置いて気を紛らわせるためにグーとパーを交互に作っていたら、見知った人影が教室の前のドアから入ってくるのが視界の隅っこのほうで見えた。



私は、中途半端にグーを作ったまま、ゆっくりと顔を上げる。





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