ねえ、理解不能【完】
「……千草、」
スクバを肩に担いでポケットに両手を突っ込んだ千草が、無表情で私の元まで近づいてきた。
私はスクバを握りしめて、席を立つ。
千草は私が立ち上がったらすぐに、くるりと向きを変えって廊下に向かって歩き出した。
私はそんな千草の背中を追う。
まだ、一緒に帰ってた頃はこんな風に毎日迎えにきてくれていた。
ふいに今思うには不謹慎な懐かしさがこみ上げてきて、居た堪れない気持ちになる。
「空き教室ってどこの?」
「たぶん、社会資料室の横だと思う」
「ん、」
必要最低限の会話しかするつもりがなさそうな千草。
千草の背中を見つめながら、空き教室までの廊下を歩く。
これじゃ、どっちがついて行ってるのかわからないな、と思っていたら、ふいに、広野みゆちゃんのことが頭にうかんだ。