ねえ、理解不能【完】
ガラガラ、と空き教室の錆びた扉をゆっくりと開けて中に入ると、ゆうが教卓のところに寄りかかって立っていた。
目が合う。
爽やかさは、ない。
だけど、怖さも、ない。
ただそこには、ゆうの切なそうな表情だけがあって、彼はそのまま、少しだけ笑った。
そんな風に、笑ってほしいわけじゃない。
でも、悲しそうに唇をゆがめた表情を見るよりはマシで、結局ゆうに対する願望はなにもかもやっぱり私のエゴなんだと思ったら、せめてちゃんと近づいて話したい気持ちになってゆうの元へ足を動かす。
だけど、
「ーーいい、こなくていい。そこにいて、いいよ。もう、怖がらせたくないから、俺に近づかないで」
ゆうはその言葉に反して優しくなだめるような声で私にそう言った。
でも、ゆうは完璧じゃない。
優しい声とは裏腹に眉毛は切なげに下がっていて、笑顔は無理してつくったように歪んでいた。
私は、ふるふると首を横に振って、ゆうに近づく。甘く見てるとか安易に信用してる、とかそういう次元にたぶん今のゆうと私はいない。
だって、いま、目の前の人から感じられるのは、ごめんね、の気持ちだけなんだ。