ねえ、理解不能【完】






なあ、川瀬。



傷つけてるのは、お前だ、って言ったけれど、傷つけることさえ俺にはできてないと思うよ。




そばにいても苦しかったし、
手放した今も本当は、


ーー苦しい。






ばかで鈍感な青は、俺の気持ちなんて絶対に知らないだろう。






青の前で、他の女と、手をつないだ。

青の前で、他の女を、抱きしめた。

青の前で、他の女に、キスをした。




傷つけたかったんだ。
俺のことを考えてほしかった。



自分以外の誰かに恋をしているかのような俺を目にうつして、それで、





ーー嫉妬、してほしかった。







自己中で幼稚な思考回路。



それを隠すかのように、他の女に取り繕った小さな甘さをあげて青の隣に平気でいた記憶と、青を手放した後に、みゆで苦しさを紛らわせた記憶。



傷つけようと思って、結局傷ついて苦しくなってるのは俺だけだとずっと思っていた。




だけど、もしそれで、

青が傷ついていたのだとしたら_______。









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