ねえ、理解不能【完】
「ぼんやりなんてしてない!ぜーんぶ千草のせいなんだけど」
「.......すぐ俺のせいにしないで」
「すぐはしてないし!」
「.......はぁ、もういい。前見て歩いて」
なんなの、その言い方。呆れて、上から目線なその感じ。
諭されるような口調にじわじわと腹が立ってくる。
千草は、聞いてんの?なんて、首を少しだけ傾けてくる。さっきまで私の話に相槌も打たなかったくせに。そんなに世の中都合よく出来てない。
返事をしなかったら、千草はまたため息をつく。
.......なんとなく惨めな気持ち。
さっき千草の背中とぶつかった鼻はもう痛くもなんともないけれど、千草を睨みながら、大げさにその先をなでる。
大丈夫か?って言ってくれるのを期待していた。少しは心配してほしかった。
それなのに千草は、「そんなに痛いなら病院行けば」なんて嫌味に呟いて、くるりと体の向きを変えて歩き出してしまった。
だから、
「千草のばーか!」
今度は聞こえるように言ってやった。