ねえ、理解不能【完】
俺は、青を空き教室には迎えにいかずに、きた道を戻る。
制服のポケットから携帯をとりだして、電話をかけた。
「ちぃくん?……どうしたの」
電話の向こうから聞こえる、青よりも高くて甘い女の声。
天使みたいだって嬉しそうに連絡先を渡してきた青に傷つけられて、それで、俺はそれよりもこの子を傷つけた。
誰もいない階段の一番上に座って、みゆ、と名前を呼ぶ。
本当に、どこまでも、最低だった。
絶対に、誰にも言わないけれど、本当は途中から、広野みゆを好きになりたかった。
好きになる部分を探していた。
信じてもらえないだろうし、こんなこと、だれも信じないでほしいけど。
でも、苦しさから逃げ出すためや苦しさを紛らわすためだけに、違う誰かを好きになることは結局無理な話だった。
青が泣いて縋ってきたとき、俺には、青以外を優先するなんてありえなかった。
それが本当は答えだったんだ、ってもうここまでくると認めるしかないだろう。
「何、どうしたの?」
心配そうに急かす声。
今までも最低だったけど、今からもっと最低なことをする。
ーーそれで、終わらせる。