ねえ、理解不能【完】
とぼとぼ歩いているからか、オレンジ色だった空はもう薄暗さをまとっていて、夜になりかけている空の匂いを、いつもよりつよく感じる。
ひとりきりの帰り道。
誰のことも気にせずに、たぶん今の私は相当悲惨な顔をしている。
落ち込んで、まるで悲劇のヒロインのように自分を置いているけれど、本当はゆうのことも広野みゆちゃんのことも傷つけているただの悪魔なんだって知ってる。
私はヒロインなんかじゃない。
信号が赤になって立ち止まる。
この先を曲がって、住宅街をすすんで、それ
で少し歩けば私の家。
そんな風にこの恋も未来も進むべき道がはっきりしていたら、よかった。
そうすれば、誰も迷わないし、不安を感じることができる。たとえ、絶望があったとしてもそのために心の準備をすることができる。
たどりつく先がはっきりしているって、どんな形であれ幸せだ。
顔をあげても、前を見据えても、後ろを振り返っても、何も見えない。恋愛って、今以外ぜんぶ見えないの。だから、苦しいよ。