ねえ、理解不能【完】
「みゆに振られたんだって!」
ーー思わず、耳を疑った。
声が出そうになって、咄嗟に口を覆う。
もしかしたら夢なのかも、と思ったけれど、こもるような蒸し暑さとか、ちかちかする目の奥とか、その感覚がすべてリアルで。
嬉しいとか、そういう感情も、はたまた負の感情もなにもなかった。
ただの驚きに支配されて、うまく呼吸ができないでいる。
「えー、みゆちゃん何様なの?!……でも、ゆり的には超うれしいなあ」
「ふたり結構お似合いだった気もするけどね。でも、旭くんがフリーってなんか私もうれしいかも」
数人の女の子のはしゃぐ声。
さっきの言葉が、
千草が広野みゆちゃんに振られた という誰かのセリフが、
頭の中をぐるぐるとまわってる。
そのうち、だんだんとそれは現実味を帯びたものになりはじめた。