ねえ、理解不能【完】
「それだったら、旭くんも傷心ってことだよねー、チャンスじゃない?!……あ、でも、ほら、シラサキ?アオ?だっけ、まみちんが、密かに推してたかわゆとその子が付き合って、ぷんぷんしてたじゃん?」
「してたしてたー」
「まみちんが言うには、かわゆその子と別れたらしいんだけど、今ねー、その子が旭くんと一緒に学校来たり帰ったりしてるけど、あの子ってなんなの?」
話題に私の名前まであがって、いよいよ息がつまりそうだ。
ゆうと別れたという事実が次第に広まりつつあったことは私も分かっていた。ゆうのところに女の子がくるのを数回見ているし。
そして、
私って、本当になんなんだろう。
千草にとって、どういう存在なのかな。
自分でも分かっていないその答えを、彼女たちはもってそうでとても怖いよ。
足が震えて、もう、心拍数は尋常じゃないほどにあがっている。
こんなとき、“幼なじみ”なんて言葉が、通用してくれるのだろうか。
「あー、あの子ね、」
広野みゆちゃんに別れたことを直接聞いたと言っていた子の鼻にかかったような高い声が耳に届いて、鼓膜が震える。
ーー聞かない方がいい。聞きたくない。
嫌な予感がして耳を塞ごうとしたけれど、それよりも先に私の元に彼女の言葉が飛んできて、
「みゆの、カモフラージュだよ」
それで、
息が止まった。