ねえ、理解不能【完】





力はでなくて、立つ気力なんてひとつもなくて、ずっと座りこんだまま。


視界はぼやけてゆらゆらと揺らめいてきたから、そっと目を閉じた。

行き場をなくした無数の涙が隙間から強引に瞼の外に逃げようとして、私はぎゅうっときつく瞼をとじる。




「……なーんだ」



静寂に包まれたトイレに私のか細い声だけが、ぽつんと響いた。





なんだ、そういうことだったんだね。

だからあの日、千草は私と仲直りしたいなんて言ってきたんだ。

それで、私たちは一緒に登下校をするようになって。

前は広野みゆちゃんに誤解されることを懸念して学校に着く前に私と別れたくせに、その時からは学校についても変わらず私の隣を歩いていたんだ。



別に広野のみゆちゃんに誤解されてもよかったから。

むしろ、誤解されることを狙っていたんだ。



……好きなのに別れちゃった広野みゆちゃんに、嫉妬してほしくて。





……なーんだ、



私といるときも、会話してるときも、『あっそ』って感じの悪い相槌をうつときでさえも、いつだって頭のなかは広野みゆちゃんでいっぱいだったんだ。

私のことなんて、隣にいたのに、ちっとも考えてくれていなかったんだね。





ーー好きだけど、事情があって 別れた。



その隙間にある“事情”に、きっと私が関係してる。






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