ねえ、理解不能【完】
だけど、やっぱり、千草の隣にいたいよ。
……なんて、そこまで図太い神経は持ち合わせていかった。
そんなに強くない。
硝子みたいな生まれて初めての恋心は、千草の本心みたいなものを人づてに聞いて、それでも耐えて真っ直ぐに好きだけを千草に向けるほどに、強かなわけではなかった。
さすがに、もう、無理だ。
「……カモフラージュ、かぁ」
千草にとって、私は簡単に利用できる存在だったんだ。小さい頃からそばにいたけれど、そこまで大切に扱われていなかったなんて。
私は所詮、自分の恋のために駒にできるような人間で、恋心を必死に隠していたけれど、本当はその必要もなかったんだ。
だって、泣いて縋ったあの日以外、きっと千草は私のことなんて何一つ考えてなかったんだから。
そのことに気づいてからも、
隣にいるなんて。
ーー そんなの、私が、死んでしまう。
無理やり抱きしめた幸せは、簡単に壊れる。張りぼてだったから。
適当に貼り付けたテープをはがしてばらばらにしたら、幸せは不幸せに姿を変えて、私の胸を支配した。
ばかだから、何一つ気づかなかった。
気づかないふりじゃない。
本当に、何も気づかなかったの。