ねえ、理解不能【完】
妃沙ちゃんはもう一度私を見て微笑んだ後、読みかけの文庫本に目を戻す。
妃沙ちゃんが夢中なこの文庫本になりたいって思ってる男の子が絶対にこの教室の中にはいるはずだよ。だけど誰にもなびかない。罪な女なの、妃沙ちゃんは。
『豚を殺したホームレス』
……本のタイトルは何にしろ。
麗しき妃沙ちゃんは見た目によらず、グロテスクな本やホラー小説が大好き。
そのギャップに私はときめいたりする。
私は妃沙ちゃんの隣で漫画を読もうと思って、自分の机の中から今一番お気に入りの少年漫画を取り出して、隣に座った。
昔から、私のそばで千草が少年漫画ばかり読んでいたから、私まで少年漫画が大好きになってしまった。
女なのに少女漫画は、全然読まない。
壁ドン、顎クイ、クール男子、言葉は知っているけれど、良さがわからないっていうか、惹かれないっていうか。
全部、千草のせい。
でもキミたちに出会えたことは幸せだよ、なんて思いながら漫画の表面をなでる。壁ドンなんかより、壁を押した瞬間、敵が現れて戦闘開始!なパターンの少年漫画の方が断然面白い。
そういえば。
千草に返してない漫画が自分の部屋にいっぱい積まれていたよね、今。隣にすむ千草だし、いつでも返せるから問題はないけれど。
……千草が忘れていたら返さなくてもいいかな。
悪巧みをしていたら、朝の不機嫌な千草を思い出した。
私はそれを頭の中から消すかのように漫画を読み始めた。