ねえ、理解不能【完】







千草を、

信じていたから。




自惚れていた。私と同じ好きは返してくれなくても、大切にしてくれてるって。

私を利用するなんてそんなことは絶対にしないって、当然のように思ってた。




仲直りだって、純粋に私のことだけを考えて、したいって言ってくれたんだ、って。

だから、苦しくても嬉しかったし、ばかみたいに泣いてしまったのに。






ああ、でも、頷ける。




『幼なじみに戻るために、青と仲直りしたいわけじゃない』



仲直りしたとき、そういえば千草はそんなことを言っていた。
分かっててほしいことがあるって。
思えばあの時に千草は私にちゃんと忠告していたんだ。




今、その意味が、十分すぎるほどに、わかってしまった。




思いがけず、知ってしまった噂は、きっと事実だ。








「………やめる、」




もう、ぜんぶ、やめる。


トイレのなかで、そう宣言した途端、涙は力一杯閉じていた瞼を押しやって溢れてきた。






< 390 / 450 >

この作品をシェア

pagetop