ねえ、理解不能【完】





「……青、あのさ、」

「ーーねえ、千草。広野みゆちゃんと別れたの?」



知っているけれど、本人にもう一度聞く。
確かめる、というよりは、これから自分の初恋を終わらせるために。


千草の瞳がまた揺れて、目が大きくなる。


きっと、動揺しているんだ。
まさか、私からそんなことを聞いてくるなんて思わなかったんだろう。




数秒の沈黙の後、千草が小さく頷いた。





「……別れたのって、私の、せい?」





ーー泣かないで、私。

お願いだから、千草の前で、涙なんてもう絶対に流したくないの。




千草の顔が、ぐっと歪む。

驚いた表情をくずして、つり目がちな目元が不自然に動いて、苦しげなしわをつくった。

その表情のまま、私に一歩分近づいてくる。





「……そーだよ、青のせい」



冷ややかなはずなのに、どこか柔らかい千草の声。それが、そのままこころに放たれて、恋心を刺す。





もしかしたら、私はカモフラージュなだけじゃなかったのかもしれない。


私のせいで広野みゆちゃんに振られてしまったから、私を利用したのは、その腹いせでもあったのかな。






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