ねえ、理解不能【完】
「ごめ、ん、千草」
私のせいで、千草は好きな人と別れて、
それで、私を利用した。
ゆるすからゆるしてほしい。
恋を殺すから、解放させてほしい。
ーー私、泣くな。
今泣いたら、だめ、だ。
この自分だけの陳腐なエンドロールに、涙なんてひとつも必要ない。
「……違う。青のせい、だけど、違って、」
「………っ、」
「…俺が、青のことを、」
ーー「っ、まだ、間に合うよ……!」
私は千草の声に自分の声を重ねる。
もういいんだ、本当に、もう、いい。
ごめんね、千草。
これ以上はもう、聞きたくない。
「……あのね、ひ、広野みゆちゃんはね、まだ千草のことが好きなのっ」
「…は、」
「だから、…間に合う。大丈夫だから。千草は、私と一緒にいる場合じゃない」
「何、いってん、の」
「…広野みゆちゃんのことが好きなんでしょう?あのね、千草。好きって気持ちは、言葉で伝えなきゃ伝わらないんだよ。本当に大丈夫だよ、千草。……きっと、うまくいくから」
「好き」は、言わないと伝わらない。
私の「好き」が、今なにひとつ千草に伝わっていないように。
広野みゆちゃんに「好きだ」っていってあげれば、千草の気持ちはきっと大丈夫になるんだから、そんなに悲しそうな顔をしないでよ。
……悲しいのは、苦しいのは、私だ。
頰に伝っているのは、きっと汗。
涙じゃない、から。