ねえ、理解不能【完】
「……心配しなくても、両思い、だから。私といても、何も変わらないのっ、だから、……っぅ、ちゃんとっ、千草の気持ちを広野みゆちゃんに伝えようよ。カモフラージュとか、してる場合じゃないんだよ……!は、はやく、会いに行って、広野みっ……?!」
続きは、
言えなかった。
腕を力任せに引かれて、気がついたら、千草の顔が目の前に広がっていて。
今までで一番切なそうに歪んでいる。
至近距離なのに、そのことがはっきりとわかる。
千草の瞳から、逃げられることはできない。私たちのあいだに距離はなくて、だから、余計に。
キューピットになるための言葉は、
千草にうばわれた。
唇に、じんわりと熱が広がっていく。
千草の両手が私の頰を強い力で包んだかと思ったら、左手だけがゆっくりと背中にまわった。
強く、加減もなく、塞がれた唇。
血がじわりと滲んでいるのか、舌先に鉄の風味を感じた。
きっと、歯がぶつかって唇の裏が切れたんだろう。
瞳を合わせたまま、ついばむように千草の唇が動いて、触れる位置がずれる。
私は、抵抗、しなかった。