ねえ、理解不能【完】
「…みゆのこと、好きじゃない」
「……嘘だっ、」
千草の言葉を否定したら、強い力で抱きすくめられた。
今度は、逃がしてはくれない強い力だった。
抵抗しようにもできないくらいで、少し痛くて、窮屈で、それなのにどうしてこの場所が全てなんだって思ってしまうんだろう。
「嘘じゃない。……信じて」
千草の速い心臓の音と、切ない声。
私は、千草を抱きしめ返すことなんてできないけれど、その声に、拒む、という概念はどこか遠くに消えてしまって。
「……もう、限界」
「……っ、」
「心臓いたいんだって」
「なん、でっ……」
「青が、いるから」
私を抱きしめる千草の腕の力が、わずかに強くなった。
さらに、身体は痛くなる。
だけど、その痛さが今は欲しかった。