ねえ、理解不能【完】
ねえ、理解不能











千草の部屋についたら、繋いでいた手が離された。

私も千草もベッドではなく、床に座った。





懐かしい千草の部屋。


甘いバニラの匂いはもうひとつもしなくて、千草の匂いが広がっていて。

それで、たった今引っ込んだはずの涙がまた出てきそうになってしまった。





腕が触れ合うほど近くに座った千草をそっと見上げれば、目がぱちりと合う。


そうしたら、千草は体重をわずかに私に預けるみたいに、身体をかたむけてきて。それで、触れ合いそうでぎりぎり離れていた千草と私の身体の右側と左側はぴたりとくっつく。



どきり、と心臓がはねて、千草から目をそらそうと思ったけれど、やめた。


もう、この胸の高鳴りからも、千草に対する気持ちからも、逃げたくないんだ。



顔にもじんわりと熱が集まっていく。
きっと、もう真っ赤になっているだろう。



だけど、うつむかない。


こんな風にドキドキしてしまっている私のこと、ちゃんと千草に、見てほしい。








「青、」



千草の少しだけ震えている声。

私はゆっくりと頷く。






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