ねえ、理解不能【完】
「……傷つけて、嫌な気持ちにさせてごめん。でも、青が傷ついて、ざまーみろ、って思う自分が、いる」
「……うん、」
「でも、そうやって傷つけることでしか満たされない自分が、嫌で、」
「………、」
「ダサいから、もう、やめる」
千草が、言葉を落としていく。
無口で口下手な千草が、言いずらいことばかりを、言いずらそうなままに、それでも一生懸命伝えようとしてくれているんだって思ったら、愛しさで胸がおかしくなりそうだ。
「青、」
「……、」
「……俺さ、」
千草の右手が、私の左手をふわりと包む。
それからゆっくりと顔が近づいてきて、千草はこつんとおでこを私と合わせた。
心臓が、また震える。
ふたりともが、お互いの瞳に捕まっている。
額から交わる体温に、私と千草どっちの方が熱いのかわからなくなる。
千草が、ゆっくりと口をひらいて、その時に起きた風が優しく私の唇をなでた。
「ーーおかしくなるくらい、ずっと、青が好き」
千草の、切なさと甘さを同じくらい含んだような声音に包まれて、一度、魔法ではないことを確かめるかのように、瞬きをした。
だけど、もう一度瞼を開けても、
熱っぽい千草の瞳がわたしを映していて。
それで触れ合った額も熱くて、その熱さは、魔法でもなんでもなくて、紛れもなくホンモノなんだって気づく。
_____やっと、たどりついたんだ。