ねえ、理解不能【完】
しばらく、額をあわせたまま、お互いの体温を感じていたけれど、これから新しい関係に進むために解かないといけないわだかまりがまだ残っていることは私も千草もちゃんと分かっていた。
千草が、ゆっくりと瞼をひらいて、私のおでこから自分のを離す。
それから掠めるように私の瞼に唇をおとした。
涙の海の在処に触れられたみたいでくすぐったくて、どこまでも甘くて、身をよじる。
そうしたら千草は、穏やかな表情で、指と指の隙間を埋めるみたいにぎゅっとわたしの手を繋いだ。
「もう手放す気ないから、全部言う」
「……うん」
「軽蔑、してもいいから」
そう言いながらもわたしの手を握る千草の手に少し力がこめられたから、本当は私に軽蔑されるのが怖いんだ、って気づく。
しないよ、と言葉にする代わりに、首を横に振って、同じくらいの力で手を握り返した。
そして、
千草が今までのことを私に話しはじめた。