ねえ、理解不能【完】






広野みゆちゃんと付き合った本当の理由。
今まで彼女を作ってきた裏に隠された秘密。


軽蔑、してもいい、って言うくらい最低なことばかり。聞きたくない、って途中でちょっとだけ思ってしまった。



だけど、本当は私なんかに話したくないだろうことたちを、なにも隠さずに苦しそうに打ち明ける千草を見ていたら、軽蔑なんてできなくて。聞かなきゃ、っていう気持ちになって。


ひとつも大丈夫じゃないのに、大丈夫だよ、なんて無責任に言ってしまった。

戻れない最低な過去、それはもう取り返しがつかないから、取り返さなくていいよ、って、繰り返さなかったらもういいよ、って、私はそういう気持ちしか千草にあげられない。




それから、 千草が本当はずっと私を好きだったことを、改めて聞いた。好きで限界だったんだ、って。

そんなことも知らないで、千草に女の子の連絡先を渡して紹介していた昔の鈍い私は結構、残酷だ。

苦笑いしていたら「伝えないで逃げてた俺がぜんぶ悪い」って千草は言ったけれど、その顔がすこしむっとしていたから、やっぱりちょっとムカついてた部分はあったんだと思う。



長く話すのが苦手なくせに千草はぜんぶぜんぶ言葉にしてくれて。

そのこと自体が、私への「好き」のかたちをしているように思えて、私は千草の話を聞いているうちにたまらなくなって、泣きながら笑っていた。






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