ねえ、理解不能【完】
学校に着くと妃沙ちゃんはいつものように本を読んでいて、その後ろ姿を見た時、涙腺がゆるんでしまった。
妃沙ちゃんに抱きついて、胸の中で泣き出してしまいたいよ。よしよしって、優しい妃沙ちゃんに慰められたい。
私って、きっと甘え気質なんだと思う。
だけど甘える相手は、ちゃんと選んでいる。
そのうちの一人のせいで、今こころが苦しいんだけど。
甘えたい気持ちを我慢して、川瀬君のお手本のような爽やかスマイルを思い浮かべて、頬をあげる。そして、本に夢中な妃沙ちゃんの顔をのぞいた。
「妃沙ちゃん、おはよう!」
いつも通りを繕って挨拶をする。
「あ、おはよう」
妃沙ちゃんは文庫本から顔をあげて微笑んでくれた。