ねえ、理解不能【完】
もし、していたのだとしたら、
それは、完全に無意識で。
確かに千草に対して遠慮したことはあんまりない。だけどだからといって、傷つけてもいいと思ったこともなかった。遠慮してなくても、私なりに千草の存在を大切にしていたつもりだ。
戸惑ってしまった私の背中を、妃沙ちゃんが小さな手でさすってくれる。
「青がいま、ショックなのも分かるよ。でも、旭くんの気持ちも分からないこともないの。下手くそだなあって思うけれど、こうするしかなかったんだと思う。拒絶って、ある意味難しいんだよ」
「うん、」
「今はどうすることもできないかもしれない」
妃沙ちゃんが優しさを残したまま、はっきりという。
妃沙ちゃんがそういうのなら、本当にそうなのかもしれない。
残念ながらモヤモヤする気持ちは晴れなかったけれど、妃沙ちゃんに聞いてもらえて、少しだけ心が軽くなる。
「聞いてくれて、ありがとう」
「ううん、ぼやけた答えしかだせなくてごめんね」
妃沙ちゃんが少しだけ眉をさげて、申し訳なさそうにする。
そんなことないよ、
これ以上妃沙ちゃんを困らせないように、私は頑張って笑って首を横に振った。