彼女は実は男で溺愛で

 胸を熱くさせている私に、悠里さんは紙袋を差し出した。

「これ。受け取ってくれない?」

「え」

 おずおずと紙袋を受け取り、中身を出す。
 中身は昨日一緒に選んだ服。

「せっかく選んで似合っていたんだから、着てほしいわ」

「でも、あの。お金が、なくて」

 情けない理由で恥ずかしい。

「ふふ。昨日、もらった」

「あれじゃ、全然」

 財布に入っていたのは、1万円にも満たないお金。
 decipherの新作を買おうと思ったら、上下セットで1着買えるかどうか。

「一度モデルが来た服は、店頭で売るわけにもいかないの。実際に着た子が買い取る以外は、あのまま」

「えっ。捨てちゃうんですか?」

「時期が来たら、ボランティアで海外へ送るの」

 慈善事業にも、貢献しているんだ。
 自社の取り組みを、誇りに思った。

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