彼女は実は男で溺愛で
開けてはいけない扉
悠里さんに教えてもらったメイクを、自分なりに頑張って朝から気合を入れた日に限って、経営管理本部全体の会議に出席するように通達された。
悠里さん、というか染谷さんに頑張ったメイクを見てもらえない。
そもそも、下っ端の私が会議に出席するのは、順番で回ってくる議事録を取る係があるからだ。
それが今日だったなんて。
忘れていた自分も悪いのだけれど。
会議にはもちろん本部長の龍臣さんも出席し、彼はホワイトボードの前に座る。
下座に座る私とは、距離が遠いのは正直助かった気がした。
経営管理本部には人事部、システム部や経理部などがあり、予算の話や人員についての報告など私には難しい話が続く。
話している内容はホワイトボードに記入され、それを後から印刷したものをもらえるようだ。
最初はその紙とにらめっこして、議事録を作成するのだと村岡さんが教えてくれた。
私の所属する総務課は正式には総務部、総務課だったらしい。
そういえば社員証にも、そう書いてあるかも。
その程度の認識の私が、議事録を書けるのだろうかと一抹の不安を覚える。