彼女は実は男で溺愛で

 会議室を後にして、部署に向かう。
 経理課なら、同じフロアだ。

「そういえば、経理課に柚羽って子いますよね。同期入社なんです。えっと平林柚羽」

 エレベーターを待ちながら、柚羽の話題を出すと、佐竹さんは楽しそうに話してくれた。

「うん。いるよ。彼女、頑張り屋さんだね。初々しくて、とっても可愛いよ」

 先輩のいい評価を聞けて、なんだか私も嬉しくなる。

「あ、そうそう。市村さんは総務課だよね。総務課の村岡さんも、俺らの同期なんだよ。仲良くしていたよ」

「ええっ!」

「ハハ。そんなに驚くかな。誤解されやすいからね。彼女。根はいい子なんだけれどな」

 佐竹さんはいい人だなあ。
 人を見る目もある。

 穏やかで……。
 そこまで思って、ひらめく。

 柚羽にぴったり!
 うん。絶対にそう。

 お昼休みに話題にしてみようと思うと楽しくなって、自然に頬が緩む。
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