彼女は実は男で溺愛で

 真っ直ぐに見つめられ、今はどことなく居心地が悪い。

 どういう、意味?
 男ならあれくらい、どうってことないって意味?

「俺を信用し過ぎ。危うくて心配になる」

 彼女とは呼べない口調の彼は、再び頬杖をつき、その手で口元を覆う。

「だって、悠里さんは」

「あのさ、いや、うん」

 言い淀む彼に「なんでしょう」と先を促す。

 すると、頬杖を外した彼が真っ直ぐに私を見つめた。

「俺、史ちゃんが好きだよ。異性として」

「へ」

 間抜けな声を漏らす私に構わず、彼はぼやく。

「あんな目に遭った後に言うべきじゃないのは百も承知だし、女の格好でなに言っているんだよっていうのも分かっている」

 再び私を真っ直ぐに見つめた彼は、言葉を重ねた。

「それでも、好きなんだ。史ちゃん」

 息をするのも忘れ、彼をまじまじと見つめる。
 視線を逸らした彼に我に返り、ぶわっと全身が熱くなった。
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