彼女は実は男で溺愛で
『仕事が終わったら』と携帯にメールがあり、指定されたお店で悠里さんを待つ。
モダンな作りの和食料理店の店内は、イタリアンか洋食店のような造り。
ただ、『高級の』が枕詞としてつくのだけれど。
抑え目の照明がシックな落ち着く雰囲気は、私には緊張でしかない。
予約の『染谷』を伝えると、半個室に通された。
今回は4人掛けのテーブル席だったため、入口側の一番奥に腰掛けた。
いつも支払ってもらってばかり。
今日こそは払おうと思っていたのに、払えるだろうかと一抹の不安を覚える。
「悪い。帰りがけに声を掛けられて、今日も待たせてしまったね」
現れた人物に目を丸くする。
「悠里さん、じゃない」
これには彼も目を丸くして、それから楽しそうに言った。
「俺も、悠里ではあるよ」
「えっと、はい、そうですね」