彼女は実は男で溺愛で
「俺の裏側を知って、離れていかない人は数少なくて。俺にとって、その中で恋をするのは、あり得ない事態なんだよ。人を、女性を好きになれる日が来るとは思わなかった」
人を……。
好きじゃなかった時が、あったんだ。
染谷さんの生きてきた世界を想像するだけで、胸が苦しくなる。
「ありのままでいいと、言ってくれたよね。だから、ありのままの気持ちに嘘をつきたくない」
染谷さんの綺麗な心が悲鳴を上げている様子が思い浮かんで、見ていられない。
「史ちゃんが、傷つく必要ないんだよ」
染谷さんが傷ついて来たのに、私の心配をして。