彼女は実は男で溺愛で

 黙っていると、彼は苦笑しながら言った。

「史ちゃんが大切だからこそ、心配なんだ。龍臣のとんでもない場面に遭遇して、震えているのに、俺の胸の中で無防備に眠ったりして」

「悠里さんは、悠里さんだから」

 俺と言う今の彼の胸には、さすがに抱きついたりはできない。

 でも、そうか。
 悠里さんは彼なのだから。

「男として意識してもらうためには、優しさだけじゃ見てもらえないのかなって、俺も自覚した。龍臣の女性への接し方は、気に入らないけれど」

「昨日の、その、女性は。本当に大丈夫だったのでしょうか」

 私の質問に染谷さんは、少し困ったように頷いた。

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