彼女は実は男で溺愛で
「それは、うん。人それぞれ、愛し方が違うからと言えばいいのかな」
「愛し方」
「だから、俺と穏やかに愛し合うこともできると思う」
「愛し、合うって」
向かいから手が伸び、肩を竦めた私の頬に触れる。
頬に添えた手の親指だけが、そっと頬を撫でた。
触れられた部分だけが、熱を帯びる。
「キス、したいな」
彼の言葉に息を飲んで、視線を逸らしたいのに、彼から発せられる色気のようなものに捕まって視線を逸せない。
怯えて揺れる不安げな自分の表情が、彼の瞳に映る。
彼の方がフッと視線を逸らして、言った。
「いや、やっぱり待つよ。キスをすれば、嫌でも俺を意識してくれるかとも思ったけれど。無理にしても仕方ないからね」
「私、付き合うとは一言も」