彼女は実は男で溺愛で
「染谷さんは、同期と飲みに行ったりするんですね。佐竹さんがおっしゃっていました」
「ん? まあ、たまには」
「私、悠里さんに誘われたことない」
目を瞬いた染谷さんが笑う。
「これは、悠里をしばらく禁止だな」
「いえ、染谷さんにだって、誘われてませんよね。大人として、見られていないのかなあって落ち込みました」
「ハハ。ダメだよ。史ちゃんと飲むと、甘えてしまいそう」
「染谷さんが甘える姿、想像できないです。もちろん悠里さんも」
「まだ、見せられないなあ」
そう言って、彼は湯呑みに口をつけた。
食後のほうじ茶はおいしいけれど、話を流されている気がしてしまう。
「まだって、いつならいいんですか?」
不満げに訴えると目だけ寄越して「いつかね」と、つれない返事をされた。