彼女は実は男で溺愛で

「さ、仕事に戻ろう。市村さんは、仕事の指示をしたいから残って」

 佐竹さんと柚羽は仲が良さそうに、会議室を出て行く。
 会議室の扉が閉まると、染谷さんが私に向かって優しく問いかけた。

「犯人が心配?」

「え」

「史ちゃんは、憎んでもいいくらいの相手なのにね」

「それは」

 自分でも自分の気持ちを、上手く言い表せない。

「今回の騒動は、龍臣が関わっている」

「え」

 怖ろしい三白眼の彼の姿、大柄で顎髭があって。
 その彼を姿を脳裏に浮かべ、身震いをする。
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