彼女は実は男で溺愛で
どう返事をしようかと葛藤していると、『言わずとも分かっているから』とでも言いたげに、肩に優しく手を置かれ頷かれた。
否定したところで、どう説明したらいいのか分からなくて口を噤む。
「で、私の好きな人の話、聞いてくれる?」
柚羽が頬を赤らめ、口を開いた。
「経理課の佐竹さん」
一瞬だけ喜んで、けれど私は異変に気付いてしまった。
私も佐竹さん、柚羽にお勧めだって思ったんだよって、心に浮かんだ言葉を紡げない。
発言を控えていた村岡さんの肩が『佐竹さん』という名前に、僅かに反応したから。
「佐竹さんって知ってる? ほら、午前中に会議室にいた」
柚羽は楽しそうに話を続けている。