彼女は実は男で溺愛で

「馬鹿らしい」

 冷めた声を出し、村岡さんは席を立った。
 そして、そのまま会議室を出て行った。

「あー。村岡さん恋話、嫌いそうだよね」

 時間は、ちょうどお昼休みが終わる頃。
 柚羽は村岡さんの異変には、気づいていないようだ。

 苦々しく感想を漏らす柚羽に、私はなにも言えない。

 前に柚羽と話した内容を、急に思い出した。

「私はさあ。いつも間違えちゃうんだ」
「なにを?」
「友達と同じ人を好きになっちゃうの」

 どうしよう。
 どうすればいいんだろう。

 村岡さんも、佐竹さんを好きかもしれない。
 けれど不確定な事実を、無責任には言えない。

「佐竹さんね。すごく穏やかでね。しかも私のピンチに助けてくれるなんて、かっこいいヒーローみたいじゃない?」

 嬉しそうに話す柚羽の話を、ただただ頷いて聞いて、胸が痛かった。
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