彼女は実は男で溺愛で

 もやもやする気持ちは解消できないまま、デスクの引き出しを開ける。
『元気が出て、小腹が空いたら食べてね』と、かわいい字で書かれたクッキーを手に取る。

 そして、隣でいつも通りパソコンに向かう村岡さんを横目で盗み見る。

 私は、なにもできないのかな。
 自分の無力さを感じ、不甲斐なかった。

 午後からの仕事は、パンフレットがひと段落着き、冬のノベルティの企画について。

 ノベルティとは、限定の服を買ってくれた人に無料で配布する小物など。
 今までにはお弁当箱や、ハンカチ、エコバック等がノベルティとして配られた。

 限定でdecipherのロゴとdecipherらしいリボンのマークが入るのが、最近の傾向だ。
 私もこのロゴとリボンのマークが入っているエコバックほしさに、限定の服を買った覚えがある。

 次のノベルティはどのようなアイテムがいいか、アイデアと想定価格、どんな服にノベルティをつけるのか。
 さまざまな視点から、意見を出してほしいと染谷さんに頼まれた。

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