彼女は実は男で溺愛で
「史ちゃんが手伝ってくれて、当初の予定より早く仕上がりそうだから、イメージをショップに送ったばっかりに」
なにかミスが発覚したのだろうか。
ドキドキしながら待っていると、想像とは違う続きを彼は告げた。
「それならゴールデンウィーク前に、用意できるだろうって。連休の人の多い時に宣伝できれば、連休後の売り上げにも関わるからね。ショップからの要望は当然だ」
「ハハッ」と乾いた笑い声をこぼし、目を細めた彼は私を見つめる。
「俺の部下は、新入社員の割に出来がいいらしい」
思わぬ褒め言葉に、顔を俯かせる。
「だから、史ちゃんは気にしないで」
「でも。あ、また電話鳴ってません?」
内ポケット辺りに手を当てた染谷さんは「いや、俺じゃない」と私の鞄へ視線を落とした。