彼女は実は男で溺愛で

 彼は私と目を合わせずに、テーブルばかり見つめて言う。

「そこまで言ってくれるのなら、俺と付き合おうよ」

「それは……」

「ふふ。ごめん。少し弱っているみたいだ」

 腕を伸ばして、ギュッと抱き寄せたくなる。
 彼のいつもより寂しそうな姿を、見ていられない。

「祖父に、久しぶりに会って」

「おじいちゃん、ですか」

「うん。すごく厳しい人でね」

「染谷さんのおじいちゃんなら、穏やかで優しそうなのに」

「そう言って褒めてくれるのは、史ちゃんだけだよ。祖父は俺の軟弱な態度とか、考え方が気に入らないのだと思う」

 身内に認めてもらえないのは、つらいだろうな。
 彼の悲しい心のうちを感じて、胸が苦しくなる。

「ごめん。こんな話して。史ちゃんは、俺以上に俺の話に傷つくのに」

 やっと顔を上げた彼に、消えそうな声で告げる。
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