彼女は実は男で溺愛で
複雑な心持ちでいると、いつの間にかお昼で、柚羽とそれに村岡さんと会議室でお弁当を広げた。
こっちの問題もあったんだった。
そう思っていると、柚羽が固い表情で口を開いた。
「ね、聞いてくれないかな」
お弁当をバッグから出しもせず、どこか覇気がない。
「うん。どうしたの」
「佐竹さん」
「うん」
その名前にドキリとしたのは、私だけではないと思う。
けれど村岡さんは表情に出さずに、食べていたお弁当の箸を止めない。
なにも気づいていない柚羽は、眉尻を下げ続けた。
「お付き合いしてくださいって言ったら「彼女がいる」って断られちゃった」
突然の展開に驚いて、お弁当の蓋を開けようとしていた手を止める。
視界の端で村岡さんも動きを止めたのが、分かった。