彼女は実は男で溺愛で
村岡さんは、寂しそうとも諦めとも取れるような声色で言う。
「辞めさせられるわけじゃなく、彼なら私の為に会社を辞めてしまいそうで。真っ直ぐな人だから」
佐竹さんの優しそうな顔つきを思い出し、胸が痛くなる。
私と話した時の話ぶりからも、彼が龍臣さんをよく思っているというのは伝わってきた。
「心の中では同期を大切に思っているんだと思う」と言っていた佐竹さん。
龍臣さんの、しでかした行為を知ったら。
思い詰めた彼は村岡さんとも、別れてしまうかもしれない。
「私のことはいいの。市村さんは気をつけなさい」
どう返事をしていいのか、分からずにいる私を残し、村岡さんは会議室を出て行った。