彼女は実は男で溺愛で

 7時までなら、まだ時間がある。
 予定していた通り、ボディメイク室に向かった。

「悠里は急ぎの仕事があるから、遅れるって」

 いつも通りの里穂さんに、私はホッと息をつく。

 試着室に入り、服を脱ぐと「ええ! 史乃ちゃんったら!」と、楽しそうな声を聞いて、きょとんとした。

「そうか。そうか。それで」

「どうされました?」

「もう。知らないうちにつけられたの? そ、れ」

 それ、のあとにハートマークが付きそうな言い方に、指し示された胸を見て、手で覆っても遅かった。
 カアッと顔が熱くなり、「あの、これは、その」と、しどろもどろになる。

「いいの、いいの。隠さなくても」

 ウキウキした声で話しながら、私の体のサイズを測っていく。

「そっか〜。それなら次の下着はどうしようかなあ。ああ、だから悠里は別の下着もって」

 里穂さんの中で、なにかの辻褄があったらしい。
 けれど聞くのが恐ろしくて、黙って採寸を受け続けた。
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