彼女は実は男で溺愛で
試着室を出ると染谷さんが来ていて、ニマニマする里穂さんに居た堪れない思いになる。
「はい。これ、とりあえず。付き合いたてだと史乃ちゃんは成長段階だし、どんどん胸が大きくなっちゃうかもね」
なんとなく聞き流したい内容が含まれていて、染谷さんに目配せする。
染谷さんは染谷さんで、里穂さんからなにか渡された紙袋を受け取った後、困ったように額を片手で覆った。
「悠里は童貞拗らせてるからなあ。史乃ちゃんも大変でしょう」
どうてい。
頭の中で漢字変換をしてはいけないと、センサーが反応している気がする。
「おいっ! 里穂!」
乱暴な口調の彼に目を丸くして、2人を見比べる。
「史ちゃん。里穂の言い分は、なにも聞かなくていいから」
焦っているような染谷さんがなんだかおかしくて、クスクスと笑えてくる。
「あら、助言してあげているんじゃない。初心者には、脱がしにくいものね。あの下着」
目を丸くしている私の手を、染谷さんは強引に引っ張って、ボディメイク室を逃げるように退室した。