彼女は実は男で溺愛で

 一緒にキッチンに立ち、冷蔵庫を覗いている彼が「史ちゃんほら」と冷蔵庫の扉から顔だけを出した。

 透き通るような薄い桜色のハムを差し出す彼に、促されるまま口を開ける。

「んっ。おいしい!」

 塩加減が絶品の生ハムだ。

「これはサラダに入れようか。あとのほうがいいかな。ダレてしまうから」

「ついでにこっちも」と言い、彼は唇を軽く合わせる。

「悠里、さん」

「はい。なんでしょう」

 楽しげに返事をしながら、彼は再び冷蔵庫から食材を出している。

 めぼしい食材を出し終わったのか、冷蔵庫を閉めた彼は自然に顔を近づけ、再び軽いキスを交わす。
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