彼女は実は男で溺愛で

「さあ。食べよう」

 彼が席につくのに倣い、私も席につく。
 濃厚そうなカルボナーラをフォークに巻き付け、口に入れた。

 香ばしいベーコンとパスタによく絡んだ濃厚なソースのおいしさが、口いっぱいに広がる。
 濃厚の中にもブラックペッパーの刺激があり、いくらでも食べられそうだ。

「このカルボナーラ絶品です」

「そう。よかった」

 彼は嬉しそうに目尻を下げ、私を見つめる。

「人に手料理を振る舞う機会がなくて、本当は緊張していたんだよ」

 うそぶく彼に「またまた〜」と軽く返す。

「本当に。一人暮らしに慣れ過ぎて、他人が自分の傍に居続ける空間が、もっとダメかと思っていた」

 慈しむように見つめる、彼の真っ直ぐな視線に恥ずかしくなる。
 すると彼の方が苦笑した。

「史ちゃんといると、時間を忘れてしまうから困るよ。明日は連休前最終日だ。気を抜くと思わぬミスをするから、早めに休もう」

「はい」
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